星状神経節ブロック
星状神経節とは
頚部にある交感神経の中継点の一つです。
頚椎から第一胸椎にかけて交感神経節が連なって存在しています。
そのうちもっとも下部に位置するのが星状神経節です。
星状神経節は頭部、顔面、頚部、上肢、上胸背部を支配している交感神経節です。
交感神経と副交感神経とを合わせて自律神経と呼んでいます。自律神経は呼吸、脈拍、血圧、発汗、体温、消化機能、排尿排便などをコントロールしています。
眠っていても呼吸をし血圧が保たれ体温が維持できるのは自律神経のおかげなのです。
基本的には副交感神経が基調的に働いています。
そこに必要に応じて交感神経の活動が加わるのです。
星状神経節ブロックのはたらき
星状神経節の周辺に局所麻酔薬(1%キシロカインまたは同カルボカイン)を5~8ml注射することによって交感神経の活動を抑制します。
そのため交感神経の過緊張によって引き起こされていた自律神経のアンバランス状態が改善されるのです。
収縮していた血管が拡張し血行がよくなります。
緊張していた筋をゆるめリラックスさせます。
過剰な発汗が抑えられます。
本来、交感神経と副交感神経の両者は相補的に働いています。必要に応じて交感神経の働きが優位になったり、副交感神経の働きが優位になったりしているのです。
ところが多くの病的状態では両者の協調的な連携がなくなり、一方的に交感神経優位になってしまいます。このために血行が悪くなり、筋肉がこわばり、発汗が増加するのです。
そしてそのようなアンバランス状態は往々にして固定化する傾向があります。そうなると病気はとっくに治っているのに、交感神経過緊張状態だけが延々と続くということになりやすいのです。
一方的に交感神経が優位であるのが好ましくないように、副交感神経だけが優位であるというのも望ましい状態ではありません。両者が協調的に働いて、心身のバランスを維持していくことが大切なのです。
星状神経節ブロックとは、バランスを崩し交感神経優位が固定化されてしまっている状態に働きかけ、本来の協調的活動を回復するための「自律神経のリハビリ」であると言えるでしょう。
何に効くか
- 各種の頭痛、頸部捻挫、頸椎椎間板ヘルニア、頸椎症、頸腕症候群、肩こり、レイノー病
- 非定型顔面痛、舌痛症、顔面神経マヒ
- メニエル病、突発性難聴、めまい、耳鳴り、アレルギー性鼻炎
- 中心性網膜炎、眼精疲労、ドライアイ、網膜血管閉塞症
- 自律神経失調症、パニックディスオーダー、起立性調節障害
- 帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛、カウザルギー、幻肢痛、断端痛、脊椎麻酔後頭痛
合併症
- 反回神経マヒ:
声帯を動かす神経である反回神経が星状神経節のそばを通っているため薬液の広がり方によって片方の声帯がマヒすることがあります。ただし一過性で約一時間で完全に回復します。(低頻度である)
- 腕神経叢ブロック:
薬液の広がりによって上肢のしびれとマヒをきたすことがあります。これも一過性で約一時間で完全に回復します。(きわめて低頻度である)
- 動脈内誤注入:
薬液が誤って椎骨動脈などに注入されると痙攣、意識消失などをきたすことがあります。これも一過性で完全に回復します。しかしこの合併症は吸引テストと分割注入によってほぼ完璧に防止することができますのでご安心ください。
- 頸部の内出血や血腫:
原則的に抗凝固薬服用中はブロック治療はいたしませんが、まれにご本人が服用を申告し忘れたり、いくつかの偶然が重なりこのようなことが起こったとの報告がみられます。
ブロックの後、止血のため患者さんご自身に数分間注射部位を軽く押さえていただきます。そして約30分間ベッド上で安静にしていただきます。ブロックの効果があらわれ血行の良い時間帯にリラックスして休んでいただくことが大切であると考えているからです。
帰宅後は通常の生活を送っていただいてけっこうです。