緊張型頭痛
「頭痛のはなし」で一次性頭痛(慢性頭痛)には主なものが三つあるとお話ししました。「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の三つです。
今回はこれらのうちもっとも患者数の多い「緊張型頭痛」についてお話しします。
「緊張型頭痛」は以前は「筋収縮性頭痛」と呼ばれていました。
正確にいうと「筋収縮性頭痛」と「妄想・心気症による頭痛」とが一緒にされてこの病名になったのです。
でも考えてみれば乱暴なはなしですね。
頭痛の原因が一方は筋肉の収縮一方は精神的要因というまったく成り立ちのちがうものを一緒くたにするのですから。
「緊張型頭痛」とひとくちに言ってもさまざまな様相を呈する頭痛がふくまれています。肩こりの延長のような頭痛や、精神的緊張が表面化たようなものや、ハチマキのように筋の緊張をふれることのできるものまでさまざまです。
「頸部や肩のこりを伴う頭痛で、その主体は筋緊張にある」と考えていただくとわかりやすいでしょう。
緊張型頭痛の症状
1.非拍動性の痛みである
2.両側性である
3.強弱はあるが持続性でほとんど毎日感じる
4.肩や頸部のこりをともなう
5.患者さんは概して神経質な傾向がある
6.仕事や日常生活はなんとかできている
7.軽いめまいを伴うことがある
「非拍動性」というのは脈拍に呼応した「ズキズキドキドキした脈打つような」痛みではないという意味で、この点が「片頭痛」との大きな違いです。
また痛いうっとうしいと思いながらも寝込むほどでもない、という点も「片頭痛」との差異といえるでしょう。
緊張型頭痛の治療
この頭痛は「程度は軽くても持続性である」というのがくせものなのです。そのため市販の頭痛薬を連用し、だんだん効かなくなって他のブランドの薬を使う、それも効かなくなってさらに服用量が増えるという悪循環におちいってしまうことが多いのです。
緊張型頭痛の薬物療法は「非ステロイド性消炎鎮痛薬」「抗うつ薬」「筋弛緩薬」を使います。
このうち「抗うつ薬」は予防的に投与されることが多く、明らかな作用機序は不明ですが、痛みに対する閾値を上げることで毎日の頭重感を改善するとされています。
また「筋弛緩薬」は頸部や肩に著明なこりや圧痛がある場合に処方されます。
さらにペインクリニック特有の治療法として「星状神経節ブロック」があります。
頸部にある「星状(せいじょう)神経節」とよばれる交感神経節のまわりに局所麻酔薬を注入する治療です。交感神経は筋緊張を高めたり血管を収縮させたりします。ですから交感神経の活動を休ませると、筋肉がゆるみ血管がひろがり血行が良くなるのです。
このことによって慢性的な頸肩部や頭部の筋緊張がとりのぞかれ、その結果頭痛がなくなるのです。
ペインクリニック科外来で実施される神経ブロックのなかで最も多いのがこの「星状神経節ブロック」です。もちろん健康保険の適用があります。
その他「トリガーポイント注射」「浅頸神経叢ブロック」「後頭神経ブロック」などのブロック療法、肩こり体操をはじめとする運動療法や、バイオフィードバック療法などもあります。
「緊張型頭痛」についてお話ししました。